植物の根っこは土を食べるのか?

(´・∀・)p[☆。・:+こんにちゎ*:+:・゚☆]q

ところで1579年というと、織田信長が亡くなる3年も前のことです。

いきなり何の話をするのか、とお思いでしょうが、これもきちんと野菜作りの話なのです。

日本で織田信長がまだ生きているころ、現在のベルギーのブリュッセルで、ヤン・ファン・ヘルモントが誕生しています。

彼の肩書は医師であり、化学者であり、錬金術師でした。まるでファンタジーのような書き出しですが、実際に当時の西洋では、このような人が存在したのです。

実はこのヘルモントは、今のわれわれが農業をするにあたって、たいへん重要なことを発見してくれました。

ヘルモントの時代の化学は、まだ未開拓でふわふわしています。目に見えない、つかみあぐねるものが世の中にたくさんあって、科学的真実と宗教的真実が一緒くたになっていた時代でもありました。

ほんとうのこと(科学的真実)よりも、宗教的真実のほうが重んじられる場合もよくあって、ほんとうのことを言ったりすると「神を侮辱している」といって罰せられることもあるような時代です。

そんな時代ですから、ほんとうのことを見つけるのはたいへんな作業だったし、ほんとうのことを言うためには勇気が必要な時代でもありました。

そして、多くの人がほんとうのことを知らないまま生きていました。

さて、ここで重要な役割を果たすのが、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスです。

彼は中世後期ヨーロッパの科学の世界でもまだまだ権威的な存在だったのですが、いかんせんヘルモントが生まれるよりも1800年も前の人です。

さすがに1800年も経つと、「この人、間違ったことを言ってたんじゃない?」ということに気づき始めるんですよね。

長い間、古い間違いが正されなかったのは、それを許さない封建的な時代が続いたからです。

しかしおりしも大航海時代にさしかかり、西洋社会も少しずつ世界中に広がりを見せていくことになります。言い方を変えればグローバリゼーションの幕開けです。

そのような社会の変化の中で、ようやく科学者たちも、自分の言いたいことが少しずつ言える時代になってきたというわけです。

アリストテレスは、軽いものより重いもののほうが早く落下する、と言いました。

しかしヘルモントと同時代に生きたガリレオガリレイは、軽いものが重いものより早く落ちるのは空気抵抗による影響であって、空気の影響がなければ軽くても重くてもものの落ちる速度は変わらないということに気づき、指摘しました。

ガリレオガリレイは、当時のキリスト教の支持する宗教的真実や、多数派が主張する真実におもねらず、自分できちんと確かめる作業を行ったことから「科学の父」と呼ばれています。

さて、ヘルモントはというと、そんなアリストテレスが主張していた「四元素説」に疑問を抱きます。

これ、ちょっと理屈がむずかしいので、ここでは割愛して、ごくざっくりと、誤解を招くことを承知でかんたんに言いかえますよ。

アリストテレスはこの世界の物質は「火・水・空気・土」の四元素にまとめられると言いました。

けれど、ヘルモントはいやちがう、と。

世の中は水と空気だけで成立しているのだと言ったのです。

現代に生きるわれわれからすると、ヘルモントもなんだかおかしなことを言う人だな、と思うかもしれません。

けれど、ヘルモントには今のような科学体系がない中で、きちんと自分なりのビジョンがあったのです。

たとえば、アリストテレスの説だと植物が生きるのには土がなければいけない(植物は土を食べて生きている)ことになるけれど、ほんとうは水だけで育つはずだぞ、と。

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そこで、柳の木を育ててみた

ヘルモントは自分の説を立証するためにある実験をしました。

91kgの乾いた土を鉢に入れて、2kgの柳の苗を植えたのです。

そこに、水だけを与えて5年間観察します。

するとどうでしょう。柳の木はなんと70kgにまで成長しました。

そして、ヘルモントは満を持して柳の木を鉢から外して、残った土の重量を調べます。

するとなんと、土の量はわずか100gしか減っていなかったのだそうです。

ヘルモントは、元素として木は水でできているからこそ、水だけでこんなに育ったのだ、と主張しました。

……うーん。

現代であれば、これだけ柳が成長したのは、光合成によるものだということはよく知られていることです。

が、それはわれわれがヘルモントの努力があってこそ、今の時代を生きているわれわれが知識を共有できているのです。

われわれは、木が水でできているわけではないことを知っています。

けれど、当時には光合成という考え方はありませんでした。

ヘルモントはこの実験によって、光合成発見に至る道筋をつけたのだといえます。

で、これが野菜作りに何の役に立つの?

ヘルモントが「植物の根っこは土を食べてるわけじゃない」ということを発見したのが、どうして野菜作りの役に立つのか。

これは、実は現代を生きる人もたまに、植物が土を食べていると勘違いしているからです。

あと、野菜作りをしている人でさえ、案外この「植物の根っこは土を食べない」ということをご存知なかったりするのです。

野菜作りの本に「野菜を作ると土が痩せる」とだけ書いてあるものがあります。

それは間違っていないのですが、平明に書こうとするあまり、この「土が痩せる」ことの意味を書いてないものがあるのです。

そしてほんとうに野菜の根っこが土を食べるから土そのものが減って痩せると思ってる人がいるのです。

さっきのヘルモントの話を理解した人なら、野菜を作っても土が減ったりしないことはもうご存知ですよね。

では、なぜ野菜を作ると土が痩せるのか

野菜を作ると、野菜の根っこは自分に必要な元素を根っこから吸収します。

代表的なものを挙げていくと、チッソ、リン酸、カリウムですね。

加えてカルシウム、マグネシウム、硫黄といった中量要素。

さらに鉄、マンガン、ホウ素などの微量要素。

これらは植物にとって必要な栄養素なので、植物は根を張って、これらの要素を土の中から吸収するんですね。

まず、野菜を作り続けることでこれらの要素がなくなってしまうことが、大きな意味での土が痩せるということです。

そしてもうひとつ、長い間耕作していなくて、同じ雑草ばかり繁茂し続けていたり、連作を続けた畑だと、微生物や細菌などが偏って土壌相が悪くなったり、ふつうは欠乏しない微量要素が欠乏したりすることがあります。

これも土が痩せるということです。

土が痩せるというのは、土の相が偏ることです。土の量が減るということではありません。

けれど、今でも「野菜を作っていたら土が痩せて減ってしまうから、たっぷり堆肥を入れないとダメだ」という人がいます。

堆肥の役割は、その有機質で土質をやわらかくして、微量要素を補い、発酵させたものを利用することで優良な発酵菌を補って、偏った土壌の相を是正する働きがあります。

ですから、痩せた土を改良するのであれば堆肥を入れればいい、というのは正しい。

けれど、相を改良するというだけなら、緑肥用のとうもろこしや麦を栽培して土にすき込むというのも有効ですし、微量要素や石灰窒素を上手に活用して改良するのもいいでしょう。

ヘルモントが発見してくれたことが理解できると、土壌をよくするには有機肥料をまいて土を増やすだけが手段ではない、ということにも気づけると思います。

最後ちょっと、専門的な話になってしまいましたが、ヘルモントの実験は野菜作りをするわれわれに、実に多くのことを教えてくれるのです。

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