愛してるシンドローム

「愛してるよ」

と男が言った。

女は「ほんとうに?」と聞いた。

「ほんとうだよ」

「どれくらいほんとう?」

「そりゃあ、きみが疑うのが不思議なくらい、ぼくはきみを愛してるんだよ」

「そんなこと言ったって、わからないわ」

「愛情の大きさをあらわすのはむずかしいね」

「どうすれば愛情の大きさをあらわせるのかしら」

「セックスの気持ちよさでならあらわせるんじゃないか」

「そうね。セックスでお互いに気持ちいいときには、思いやりと愛情で満たされるものね。でもあなたはセックスでどれくらい気持ちいいか、あらわせるというの?」

「ああ、そうか。どれくらい気持ちいいかということになると、どれくらい愛してるかというのと同じくらいあいまいだね。なかなかむずかしいもんだ」

ふたりはしばらく考え込んだ。そして女が切り出す。

「わたしが考えている愛情くらい、あなたはわたしのことを愛してくれているかしら」

「そうだね。きみが考えている愛情よりも、もっと愛したいと思っているよ」

「それじゃあわたしは、あなたがわたしに思う愛情を越えるくらいに愛したいと思っているわ」

そしてふたりはなにかに気づいて、とつぜんお互いに叫んだ。

「愛情の大きさはわからなくても!」

「お互いの愛情を越えたいというその思いがあれば!」

男がその先を続けた。

「お互いの思う愛情が、お互いの考えている愛情よりは大きい、ということだけはわかる!」

女がさらに続ける。

「それならわたしはあなたの愛情を信じることができる!」

そしてふたりは手と手を取りあい、熱い口づけをかわした。


しかし唇がはなれたとき、女がふと怪訝な顔をして、つぶやいた。

「でも、あなたの愛情がわたしの愛情より大きいということを、どうやって証明すればいいのかしら?」

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