タイムマシン

ある日、わたしの前に男があらわれた。顔の半分がずいぶん腫れている。明らかに怒っているのだが、なぜ怒っているのかさっぱりわからない。

「なんの用でしょう」

とわたしが聞くと、怒気をはらんだ口調で、「ふざけやがって」という。

「なにもふざけてなどいません。あなたのことも知らない。いったい何に怒ってらっしゃるのかわからないんです」

わたしの言葉に男はさらに怒りを強めた。

「おまえが言うから来てやったんだ。なにが知らないだ。おまえは知らなくてもおれは知ってるんだ!」

そういって、突然男はわたしをぶんなぐってきた。わたしはもんどりうって転げた。

「何をするんだ!」

わたしが叫ぶと、男はこういった。

「自分の胸に手を当てて聞いてみな」

そういうと、不思議なことに男はすっと消えてしまった。

いったいあれはなんだったのだろう。まったく納得がいかなかった。

まったくひどい目に遭ったものだ。


それから二日後、仕事に行こうとすると、向こうから叫び声が聞こえる。

「やった!! やったぞ!! タイムマシンの完成だ!!」

なんだ、また頭のおかしい奴が出てきたな、と思ったが、奇声をあげて走っているのはなんとこの前の男ではないか。

「おい!! 待て!!」

わたしが男を呼び止めると、男はわたしのほうを不審げに眺めながら、「どうしたんです?」と聞いていた。

「なにを、とぼけやがって!!」

「なにがですか。わたしは忙しいんですよ」

わたしはカッと頭に血が上り、そのまま男の胸ぐらをつかんで、したたかに顔面をぶんなぐってやった。

「なにをするんですか!!」

男はとぼけてわけのわからないことを言っている。いきなり人をぶんなぐってくるかと思えば、タイムマシンがどうだと叫んで、わたしのことを知らないとうそぶく、まったく頭がおかしいとしか思えない。

こんな奴は相手にすべきではないのだろう。

わたしは男に向かって捨て台詞を吐いた。

「おとといきやがれ!」

その瞬間、男の顔色に変化があらわれたように思えた。

「……そうですか。ええ、わかりましたよ」

そう言うと、男はまた突然スッと姿を消した。

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