わけがわからなくてもいい話

男「ぼくは、きみがいいと思ってる」

女「なんや、どういうこと?」

男「だから、つまり、疑わんといてほしい、ということ」

女「なに? 話がみえてけえへんのやけど」

男「あのね、遠くにおったら人の気持ちを真っ向100パーセント信じることはでけへんと思う。でもな、信じてもらいたいということや」

女「だから、なんやねん。わけがわからん」

男「いや、これはわけがわからなくてもいい話やと思う」

女「どないやねんな。そんなんアカンわ。のどに魚の骨がひっかかったようなこと言わんといて」

男「でも、なんか説明しようと思ったけどむずかしいねん。というか、説明したらアカンことのように思えてきた」

女「でもそこまで言うといて、疑うなとか信じてほしいとか、結局誰になにをしてほしいん?」

男「いや、それがやで。こういうことって、ちゃんと実際に顔と顔をみて話せば、いちいち言葉にする必要がないことやねん。やのに、それを言葉にして伝えようというのに無理があるんやって。だから、常々、言葉にせんでもわかってほしい、と思ってて、いざ言おうと思ったら、ものすごい遠回しになってしまう」

女「うん」

男「そういうことって、ふつう直接言うようなことちゃうやろ?」

女「いや、なんかようやく話がみえてきたけど、言うてもええと思うで」

男「ぼくには言えん」

女「それ、あんたの偏狭やんか」

男「いや、そんなこと言うたかて」

女「だから、あんたに合わせて抽象的な言い方するけど、言うたほうがいい思いやりは、言うたほうがええねん。そういうことは意思表示したらええねんって」

男「そんなん……でけへん」

女「あほか。肩肘張るところ間違ってるわ」

男「じぶんでもそう思うわ」

女「なんも届かんこんなところで、わざわざ遠回しなこと言うて、わかってほしいとかなんとか、そんなもん直接ひと言言うたらしまいやんか」

男「ホンマやで。こういう電脳トークでなにかしたような気になって、どういうつもりなんやろな」

女「あんた、ホンマにあかんわ」

男「だから、でけへんねんって。ぼくはだって、じぶんに問題があることをじぶんがいちばんよくわかってるもん」

女「さびしいこと言いなや。抱きしめたろか?」

男「電脳やからいらん」

女「そうやな。わたしもホンマはオッサンかもしれんからな。それやったら抱きしめても意味がない」

男「わけがわからんことを言うたらいかんで」

女「いや、わけがわからなくてもいい話や」

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