珍型コロナウイルスと珍型研究所

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、タナカ研究所では別の戦慄が走っていた。

「タナカ博士、これは……チン型コロナウイルスです」

電子顕微鏡を覗き込みながら、額にじっとりと汗をにじませ、助手がつぶやいた。

「え?」

タナカ博士は一瞬、「チン型」と「新型」を聞き間違えたかと思った。

「なにを言ってるのかね」

「ですから博士、これはチン型コロナウイルスです」

「なぜチン型というのかね」

「そりゃ博士、コロナウイルスというのは、あのウイルスの形状が太陽の外側を覆うガス層のあのコロナのような形をしているからでしょう」

「うん」

「わたしが今みているウイルスは、明らかにペニスの形をしてるんですよ!!」

興奮した助手の額からどぴゅッと汗が噴き出した。

タナカ博士は一瞬考えてから、こう言った。

「しかしきみ、それだったらそのウイルスはもうコロナの形をしていないのだから、コロナウイルスではないんじゃないのかね」

助手は「あっ!」と声をあげた。

「……そのとおりです。博士」

「うーむ、しかしそうするとこのウイルスの名前はどうすべきか」

「チンコウイルスでいいんじゃねっすかね」

助手はじぶんの「チン型コロナウイルス」という命名を否定されて、ふてくされたように答えた。博士はその態度が気に入らなかった。

「きみ、そんな投げやりなネーミングじゃだめだ!」

「じゃあどんなだったらいいんですか」

「もっと、怖いやつがいい!」

助手は子供じみたタナカ博士の言い方がおかしかったが、次はまじめに考えて、そしてこう答えた。

「鬼反り返り巨大チンコウイルスZ、というのはどうでしょう」

博士の顔がパッと明るくなった。

「それだよきみ!! それならとっても怖い!! 市民がきちんと警戒してくれることだろう」

「そうでしょう博士!!」

博士と助手は満面の笑みをかわした。博士はようやく本題に入った。

「ところできみは突然わたしを呼びつけたけど、そもそも具体的にきみがみつけたこのウイルスはどのようなおそろしい症状があらわれるのかね」

「は? 特になにもありません」

博士の顔面から表情がすべて消え去った。

「え?」

「いや、だから、特になにもありません?」

「なにもないの?」

「ええ、感染はするんですけど、健康そのもの。咳も出ないし、熱も出ません」

「え?」

「博士! さっきから耳が遠い(笑)」

「いや、ちょっといろいろ混乱して。じゃあ、そもそもコロナウイルスでもなかったんだ」

「そうですよ、とりあえず最近みんなコロナコロナって言ってるから、便乗してみただけで」

「え?」

「博士、聞き直さないでください(笑) だから、なーんにもないんですって。無害だし、なんだったら発見してもしなくてもどうでもいいくらい」

博士は長い時間黙っていたが、ようやく振り絞るようにしてこう言った。

「名前、やっぱりチンコウイルスにしよっか」

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